2026年8月21日
「今すぐ妊娠する予定はないけれど、将来は子どもを持ちたい。卵子を凍結しておくことは意味がありますか?」
卵子凍結について、このようなご相談を受けることがあります。
卵子凍結は、将来の妊娠を保証するものではありません。しかし、卵子を凍結した時点の年齢を保存できることは、卵子凍結を考えるうえで重要なポイントです。
今回は、実際に卵子凍結を行い、その後パートナーとの妊活を開始され、凍結していた卵子から胚を作って妊娠・出産に至った患者さんの経過をご紹介します。
34歳で卵子を凍結
患者さんは34歳のとき、将来の妊娠に備えて卵子凍結を希望されました。
採卵では12個の卵子が採取され、そのうち成熟卵子8個を凍結しました。
その後、パートナーとの出会いがあり、妊娠を希望して治療を開始されました。
まずタイミング法や人工授精を行いましたが、妊娠には至らず、体外受精へ進むことになりました。
37歳での採卵では、受精・胚発生に課題が
37歳で行った採卵では18個の卵子が得られました。
一方で、採卵時の精子所見には、直進前進性の低下、精子頭部の空胞の多さ、奇形率の高さなどがみられ、受精後の胚発生についても慎重に経過を見ていく必要がありました。
実際、受精確認の段階では2PN(正常授精)が少なく、患者さんもショックを受けておられました。
最終的に、この採卵からは3個の胚盤胞を凍結することができましたが、妊娠につながりませんでした。
そこで、以前34歳のときに凍結していた卵子を融解し、顕微授精を行うことになりました。
34歳で凍結した卵子から胚盤胞へ
凍結していた成熟卵子8個を融解し、顕微授精を実施。
その結果、胚盤胞まで発育した胚を得ることができ、その中から5BBの胚を移植し出産されました。
34歳で凍結した卵子が、数年後に実際の妊娠・出産につながった症例です。
もちろん、すべての卵子凍結で同じ結果が得られるわけではありません。凍結卵子を融解した後には、卵子の生存、受精、胚盤胞までの発育、そして着床という複数の段階があり、それぞれに確率があります。
だからこそ、卵子凍結を検討する際には、「何個凍結すれば大丈夫」という単純な考え方ではなく、凍結時の年齢、卵巣予備能、将来の妊娠希望、凍結できた成熟卵子の数などを総合して考えることが大切です。
卵子凍結で大切なのは「卵子の数」だけではありません
卵子は年齢とともに、数だけでなく染色体の正常性という面でも変化していきます。
そのため、将来の妊娠を考えているものの、現在は結婚・妊娠のタイミングが決まっていない場合には、卵子凍結が選択肢の一つになることがあります。
今回の患者さんも、卵子を凍結した時点では、いつ妊娠を希望することになるのか分かりませんでした。
しかし、34歳の時点で卵子を凍結していたことで、その後パートナーと妊活を始めた時に、「34歳の時に保存しておいた卵子」というもう一つの選択肢を持つことができました。
卵子凍結は、未来の妊娠を約束するものではありません。
それでも、人生のタイミングと妊娠のタイミングが必ずしも一致しない時代だからこそ、将来の選択肢を残しておくための一つの方法として、卵子凍結を考える意義はあります。
当院では、単に卵子を凍結するだけではなく、その後の融解・顕微授精・胚盤胞培養・胚移植までを見据え、患者さん一人ひとりの年齢や卵巣予備能、将来の妊娠希望を踏まえて治療方針をご提案しています。
「今は妊娠できないけれど、将来は子どもが欲しい」。
そうお考えの方は、まず現在の卵巣の状態を知ることから始めてみてもよいでしょう。