2026年8月21日
「体外受精を始めたら、妊娠するまでに何回くらい採卵や胚移植をするのでしょうか?」
不妊治療の診療では、このような質問をよくいただきます。治療を始める前に、どのくらいの期間や回数が必要なのか、できれば具体的に知っておきたいと思われるのは当然のことです。
日本ではART(生殖補助医療)が広く行われており、近年では年間50万周期を超える治療が行われています。ただし、全国のART統計では「妊娠した方が、妊娠に至るまでに平均何回採卵・胚移植を行ったか」という数字は、一般的な全国平均として公表されていません。
そこで今回は、当院で2025年にARTによって妊娠された方について、妊娠に至るまでの治療回数を振り返ってみました。
2025年の当院ART妊娠者では、採卵回数は平均1.4回、胚移植回数は平均1.8回でした。
つまり、妊娠された方の治療経過を振り返ると、採卵は平均すると1~2回、胚移植は2回弱という結果でした。
ただし、この数字を「2回採卵すれば妊娠できる」「2回移植すれば妊娠する」と受け取ることはできません。これはあくまで実際に妊娠された方を対象とした平均値だからです。
また、採卵回数と胚移植回数は必ずしも同じではありません。
1回の採卵で複数の卵子が得られ、そこから複数の胚が凍結できれば、1回の採卵で得られた胚を使って複数回の胚移植を行うことができます。一方で、採卵しても受精しない、あるいは胚盤胞まで発育しない場合には、移植まで進めないこともあります。
そのため、体外受精では単純に「何回採卵するか」だけを見るのではなく、1回の採卵からどの程度の卵子・胚を得られる可能性があるのかを考えることが重要です。
さらに、治療回数に大きく関係するのが年齢です。
女性の年齢が上がるにつれて、卵子の染色体の状態に問題が生じる割合が高くなることが知られています。そのため、採卵をしても移植可能な胚盤胞が得られず、複数回の採卵が必要になる場合があります。
一方で、年齢が若く、1回の採卵で複数の良好胚が得られれば、1回の採卵で2人目、3人目のお子さんの妊娠を目指せることもあります。
また、子宮や子宮内膜の状態、精子の状態、これまでの治療歴などによっても、適切な治療方針は変わります。
だからこそ、ARTでは「平均何回」という数字だけで治療計画を決めるのではなく、その方が現在どの段階にいて、次に何をすることが妊娠への近道になるのかを考えることが大切です。
🌹当院では、採卵数や受精率、胚盤胞到達率、胚のグレードなど、これまでの治療結果を一つひとつ振り返りながら、その方に合った治療方針を検討しています。