2026年4月11日
「35歳を過ぎたら、もう遅いのでしょうか?」
外来でよくいただく質問のひとつです。
結論からお伝えすると、「まだ間に合うけれど、“時間”を意識した計画がとても大切な時期」です。
卵子の数や質が年齢とともに低下していくことは、さまざまな研究で一貫して示されています。
ただし、それは「35歳を境に突然妊娠できなくなる」という意味ではありません。
実際の診療では、同じ35歳でも、卵巣予備能(AMHなど)、月経周期のパターン、既往歴、生活背景によって“持ち時間”には大きな個人差があります。
そのため当院では、「年齢だけ」で一律に治療方針を決めることはしていません。
一方で、35歳以降において最も大きなリスクは、「いつか自然に授かれたら」と考えている間に時間が過ぎてしまうことです。
当院では、35〜37歳の方には、まず1〜2周期の検査とタイミング指導で反応を確認しながら、
「このペースであと何周期続けるか」
「どの段階で人工授精や体外受精を検討するか」
を早い段階で共有するようにしています。
38〜40歳の方では、自然妊娠の可能性もゼロではないことをお伝えしつつ、初期段階から体外受精まで含めた選択肢と、それぞれに必要な時間や回数の目安を具体的にお示ししています。
私たちが大切にしているのは、
「焦らせすぎないけれど、“今の一年”の重みは正直にお伝えする」
というスタンスです。
治療を急ぐあまり、気持ちや体がついてこないままステップアップしてしまうと、途中で疲れてしまうことがあります。
一方で、「まだ大丈夫」とだけお伝えして月日が経ってしまえば、将来の選択肢を狭めてしまうかもしれません。
だからこそ、検査結果やこれまでの妊活歴、お仕事やご家庭の事情を伺いながら、
「今の段階で考えられる最も現実的なプラン」と
「次の一手」
を、見通しを持てる形で共有するよう努めています。
35歳以上の妊活は、
「今の自分の状態を知ること」と
「限られた時間をどう使うか」
を一緒に考えることから始まります。
一人で年齢と時計を見つめながら悩み続ける前に、まずは一度、ご自身の“持ち時間”を確認しにいらしてください。
その先のペースは、あなたの価値観に合わせて一緒に決めていきましょう。
なお、年齢のみで可能性が決まるわけではありません。
当院でも、体外受精により採卵時44歳5か月でご出産に至った方(PGT:着床前遺伝学的検査は未施行でした)がいらっしゃいます。
また、採卵時46歳7か月および45歳10か月で胎児心拍を確認できたケースも経験しています(いずれもその後流産となってしまいました)。
人工授精においても、44歳3か月(3回目)および43歳11か月(4回目)で妊娠に至った方が現在継続妊娠中です。
ただし、これらはあくまで個別の症例であり、年齢とともに妊娠率・出産率が低下する傾向自体は変わりません。
そのため、こうした可能性も踏まえつつ、現実的な見通しと治療戦略をご説明するよう心がけています。